幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

上限金利とグレーゾーン。

いきなりこんな話題になってしまい申し訳ありません。(笑)

業界を離れて既に私も数年が経っておりますけれど、未だにこういったことには敏感に反応してしまいます。

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060212k0000m070135000c.html

毎日の社説でも、やはり「金貸し=悪」のプロトタイプですね。30%近い金利は高い=消費者金融金利は高すぎる=生活困窮者は救済措置を講ずるべき=消費者金融金利規制は必要・・・・・だいたい何処も金貸しを否定する人はそういう論調です。

挙句がこれ。

http://www.shiho-shoshi.or.jp/web/publish/geppou/200405/2004_05_028.html

日本の消費者金融市場に置ける上限金利規制強化(=金利引下げ)の影響を分析した論文を、かなり無謀な理論で否定してきています。

途中、「金利引下げの必要性」の項目では、はっきり言って笑っちゃいました。「不健全な資金需要者は排除されるべき・・・」なんて乱暴過ぎます。貧乏人は死ね、と言いたいんでしょうか?最近のホリエモンなんかの”勝ち組・負け組”の発想と何等変わりない程度の低俗な論調ですよ、これは。それに低額所得者層を行政が救済すべきなんて奇麗事言ってる人は、ほんとにそういう世界を見てないからそんな無責任な言い方出来るんですよ。誰が机上の計算の範疇だけで生きて行けるんですか?不確定要素が多いから収入が少ない訳で、そういう人たちが行政の救済の範疇だけで生活出来るなんて信じることがオメデタイです。

私はこの目で”行政の救済の範疇では生きて行けない”方々を何人も見てきて、手前味噌ですが、私がご融資にお応えしたことで感謝していただいた経験も、幾度となく持っています。私は金利について、「何パーセントですよ」なんて言い方はしません。そういう方々には「今回は10万ご用立てしたから、一ヶ月3,300円、お利息をいただくことになりますね。だから、都合ついたら早めに返してくれたらいいからね。」といった説明ですよ。嘘も隠しもないですし、だましている訳でもありません。法律に則った金利を、ちゃんとご説明して返していただけるようにアドバイスもして、ご利用いただいていました。”庶民金融”って呼び方が、私は大好きでした。私も生まれが田舎なので、とても実家では人に話せない生業でしたが、それでも人から感謝される仕事が出来ることは、やりがいを感じていましたし、プライドを持って取り組んでいました。

でも、私がその仕事を失った最大の理由が「上限金利引下げ」なのです。同じように真面目に営業していた仲間も皆見切りをつけてしまって、今では銀行の傀儡の大手消費者金融と、資金力にモノを言わせた外資系、そしてアンダーグラウンドな方々しか残っていません。これが健全な市場ですかね?この司法書士会の論文を書いた人ととことん話をしてみたいです。この方は、上限金利を引き下げれば自己破産が減少すると思っていらっしゃるようですが、それは業界の現実を知らなさ過ぎです。金利を下げてハイリスク層を排除すれば自浄作用で市場が健全化されるなんて、消費者信用市場の特性を理解していません。物販ならともかく、金利を仕入れコストと同等には議論出来ないのですよ。現実に、自己破産者は金利を29.2%に引き下げても減少はしていません。これをもっと引き下げたって、結果は同じです。金利引下げ=破産減少という公式は、絶対にあり得ません。

人間には頭の良い人悪い人、我慢強い人、気の短い人、のんきな人、性格がいろいろあるように、お金に対する感覚も千差万別、クルマの運転と同じ位個性が出るのが金銭感覚です。借金を無駄だと思う人も居れば、借金しても我慢するよりマシだと考える人が居るから、金貸しは生活が成り立ちます。金利だけなどではなく、クレジットの3C:Character(支払意思)・Capacity(支払能力)・Control(自己管理)のほうが、その人の返済能力に影響を与えるのです。そんなこともきちんと検証しないで、ただ単に上限金利だけを引き下げれば、不健全な資金需要者が排除出来る訳がありません。どんなに属性(勤務先の質や居住年数・勤続年数の長い人)の良い人でも、Characterの悪い奴には私は絶対に貸しません。

私が思うのは、多重債務者対策やるんなら、信用情報の整備を考えなさいって事です。今、自己破産の増加に歯止めがかかっている一番の理由は、信用情報の交流拡大にあります。当初銀行・信販系の業者は、消費者金融業界の信用情報を欲しがりました。彼らの頭には、「消費者金融の利用=ハイリスク」として選別することしかなかったようですが、反対に消費者金融業界からすれば銀行と信販で多額債務(金利がいくら低くたって、高額の与信を受ければ同じなんですよ)に陥っている人たちに、貸さずに済むようになったことが、最大の理由です。私もこれが一番知りたかった。せっかく信用情報見て他社利用無くても、銀行で無担保で数百万から借りていれば、消費者金融業者は貸せませんよ。向こうは土地や勤務先・そして親族を表立って調べ上げ、実質的な担保を取ってますから、本来の意味の「信用貸し」である消費者金融業者は同じ土俵では勝負になりません。

金利を下げれば多重債務問題が片付くと思ったら、大間違いです。ただ、今のマスコミや政治屋、そして偽善者達は「金利引下げ」と「金融業者」攻撃が錦の御旗で批判していれば、何も知らない人たちからは同調されるでしょうけど。

あと、一部で消費者金融の広告への批判が出ていますが、消費者金融業者というだけで、広告してはいけないんでしょうか?広告する余裕があることが批判されているようですが、他にも広告している別の業界の方々は、良いんですか?そんなに余裕があるなら金利を下げろって主張されていることは、業界の企業努力を真っ向から否定していますよね?これは一種の業界ハラスメントですよ、本当に。金融業者は広告出すような利益を上げるな、ってどこの馬の骨とも知れない人間に、言われたくは無いです。こんなおかしな主張をしても、批判されずともなんとなく通ってしまう日本の現状を、私は悲しく思います。私が従事していたような中小業者は、40.004%でも収支トントン、給料だってはっきり言って安いです。なかなか年収500万超えませんでしたし。電気代・紙代・ビルの清掃費用、みんな節約してやっと社員が食える程度の利益でやっていたんですけどね。私の居た時代は新聞にも広告を出してもらえず、消費者金融って言うだけで朝日なんかは門前払い、広告の担当者にも会えず、すごすご帰社するしかなかったし。そんな時代を思えば、今はバンバンTVでCM流れるし時代は変わったと思います。

しかし、アンダーグラウンドな方々が、消費者金融市場を見捨てて詐欺集団にまで加担するようになって来たのは、さすがに私も予想外でした。こんなに市場が荒れるとは思っていませんでした。どれもこれも出資法上限金利が29.2%などと言う経営実態からかけ離れた金利まで引き下げられたことから始まっています。

興味のある方はこれを読んで見てください。早稲田大学の坂野さんという教授が書かれたレポートです。

http://www.waseda.jp/prj-ircfs/pdf/ircfs02-007.pdf

我々業界人のレポートを、正面から分析してくれています。

後は、今週号の日経ビジネスでは紹介されていましたが、Amazonでも出ていない本があったので、ちょっと探して読んでみようと思っています。

消費者金融市場の研究」というタイトルで堂下 浩さんの著書です。出版社は文眞堂ということなので、大学の教科書ぐらいの冊数しか出版しないのでしょうか?ご存知・またはお読みになられた方がいらっしゃったら、感想など教えていただきたいと思います。