幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

【引用】「腎臓を売れ!!」から7年 改めて浮かぶ貸金業金利問題の難しさ

初めて他の方の記事を引用させていただきます。

日経ビジネスEXPRESSの記事なので、リンク貼れないので・・・。

なんか、やっと「ちゃんとした」業界の分析をしてくれた記事に巡り合ったので、嬉しくなっちゃいましたよ。

田村賢司の「順張り逆張り

「腎臓を売れ!!」から7年 改めて浮かぶ貸金業金利問題の難しさ

ライブドア事件に押しやられる格好で、すっかり注目度は下がったが、これもまた平成ニッポンの御代を象徴する問題として一言。

  サラ金こと消費者金融と、主として中小企業が相手の商工ローンなど、貸金業の融資金利見直しを巡る金融庁、専門家などの議論が錯綜している。

  「腎臓を売れ!!」。債務者を怒鳴りあげた取り立て電話の録音テープが公開され、大手2社の社長が国会に証人喚問される事態となった商工ローン問題が1999年。

  翌年、金利規制は一部強化されたが、今度は闇の勢力ともつながりがあるとされるヤミ金融が拡大。2003年6月には、その過酷な取り立てを苦にした大阪の老夫婦が踏切自殺をするなど、消費者金融商工ローンは繰り返し社会問題になってきた。

  今年、改めて問題となったのは、最高裁が1月、融資金利について厳しい判断を下したのがきっかけだった。その焦点の1つは、グレーゾーン金利と呼ばれる、「法の網の目」にある。

  消費者金融などで貸金業者に適用される融資金利規制は、本来は利息制限法が規定する15~20%(融資金額によって異なる)。ところが、これとは別に上限金利を規制する出資法という法律があり、こちらの上限金利は29.2%。グレーゾーン金利は、この両者の間の金利のことだ。

▼同じ金利を規制する法律が2つ

  金利を規制する法律が2つあって、一方で制限する金利を、他方が認めるという「摩訶不思議」は、ちょっとあり得ないものだが、実のところ、この状態は明治の初めから続いているものだ。

  100年を超える不思議は官にとっては、そうではないようだ。利息制限法が本来規制しているのは、「担保があり、大口で長期貸し付け」の中堅、あるいは大企業などが顧客の中心の銀行。一方の出資法は、「無担保で小口、短期の貸し付け」の零細企業や個人などが顧客となる貸金業者としてきた、といわれるからだ。

  明確に規制業態を示していたわけではなかったが、そこは、大蔵省の指導の威光が働いたのだろう。また言えば、今も利息制限法には罰則がなく、出資法刑事罰貸金業の登録取り消しを含む罰則規定を設けているあたりに業態規制の意図が何とはなく感じられる。

  だがしかし、出資法の上限は、54年に旧法から現行法に変わって以来、83年11月まで上限109.5%。他方の利息制限法も同年の衣替えで現行の15~20%に改定されている。

  54年時点で、実に89.5~94.5%ポイントもの差があったグレーゾーン金利の半世紀の歴史は、“貸金業者向け”の(出資法金利を下げ、その差を縮めることにあったが、節目は前述の商工ローン事件の後、現行の29.2%になっているように、社会を揺るがす事件にあった。

  半世紀を振り返って見えるのは、時代に遅れる官の姿である。国は、グレーゾーン内の金利を適用できる条件を、貸金業規制法というさらに別の法律で規定している。

  「規制法に基づいた登録業者」で、「貸し付けの際、法律で規定した事項を記載した契約書を渡す」と同時に、「借り手が自分の自由な意志で利息を返済」するといった要件を満たしていれば正当な金利とする、などだ。

  グレーゾーンを法的に補強するかのような、この仕組みができたのは83年。やはり消費者金融問題が起きた年だ。だが、これも結局、実態の前に“行き詰まる”。

▼年収316万円に貸し金負債444万円

  「借り手の意志」といっても、現実には「利息の支払いが一度でも滞れば、元本とも一括返済をする」といった条件が付くこともあり、自由意志というより、強制力となっている。法の建前などどこへやら、結局、現実は変わらなかったというわけだ。

  さらにやっかいなのは、出資法の上限金利を引き下げたのと時を同じくして、ヤミ金融問題が大きくなってきたことだ。金融庁が、上限金利見直しなどのために昨年春、設けた「貸金業制度などに関する懇談会」に報告された資料によると、98年に年間で約10万件だった自己破産は、2004年には倍増。自己破産者は平均で年収316万円に対し、8.6社に444万円の債務を負っているという。

  浮かぶのは、消費者金融金利上限を下げると、信用力の低い借り手は、ヤミ金融に流れ、一部業者が利益を上げるために過剰融資をして自己破産者を増やす、という構図である。

 さらに言えば、「大手銀行も合弁などで、消費者金融子会社を設立。従来の消費者金融業者より低めの金利で融資するため、優良顧客を奪われた既存大手業者が、よりリスク度の高い顧客を取り込みに走り、押し出されて零細業者がさらにリスク度の高い顧客に貸し込む。あるいは経営危機に陥り、ヤミ金の領域を拡大する」(スタンダード&プアーズのアナリスト、木村泰史氏)図も見える。

  対して官は、利息制限法が法務省出資法金融庁法務省と所管が異なり、最後に出来た貸金業規制法も議員立法とあって調整の動きは鈍い。

  自己破産の背景には、長きに及んだデフレ不況の影響とともに、格差の拡大、無計画と享楽の蔓延など、日本の変質もある。加えて、かつてなら見向きもしなかった市場へ大手銀行が参入するなど、経済情勢の変化も大きく横たわる。

▼上限引き下げなら利益の80%が飛ぶ

  いずれにも官は後手に回る。金融庁の懇談会で検討中の規制改革で、出資法の上限金利を引き下げることになれば、大手消費者金融でさえも業績への大打撃となる。スタンダード&プアーズの試算では、上限金利を18%に下げた場合、武富士アコム、プロミス、アイフルなどでも単体営業利益の60~80%が減少するという。

  中小業者は推して知るべしであり、この層の経営破綻相次ぐ状況となれば、ヤミ金融の拡大も予想される。とはいえ、グレー状態の放置は、多重債務者、自己破産者の拡大に手をこまぬくことに等しい。

  だが、ある懇談会関係者は言う。「結局、グレーゾーンの解消は、出資法の上限金利を下げるか、利息制限法の金利を上げるかしかないが、最後は両論併記になって終わるのではないか」。「通常は、金融庁が落としどころを考えるものだが、両論併記にして政治家に任せようとするのでは」。

  大手銀行に大手から零細までの貸金業者、さらには政治家に他省庁…。困難を極めだろう調整の難しさは、半世紀に及ぶ官の解決先送りの結果である。