幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

消費者金融バッシング。

突っ込みどころ満載のこの記事を、突っ込んで見たいと思います。


引用:<消費者金融>生命保険での債権回収、1割は自殺(毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060906-00000009-mai-soci

 消費者金融10社が債権回収のため借り手全員に生命保険を掛けていた問題で、大手5社で支払いを受けた件数が昨年度1年間で延べ3万9880件あり、このうち自殺によるものは判明しているだけでも3649件に上ることが分かった。この保険の支払い状況が明らかになるのは初めて。全体の件数の中には死因が分からないものも多く含まれており、借り手の自殺によって消費者金融に生命保険金が支払われた件数はさらに多いとみられる。多重債務者が自殺に追い込まれている深刻な実態が浮かんだ。


→申し訳ないのですが、保険金受領した39880件の中の自殺者3649件が、全員多重債務で自殺に追い込まれた・・・と確定的な証拠をお持ちなのでしょうか?1件1件遺書でも確認なさったのでしょうか?死因が自殺と分かっただけで、多重債務ではないかも知れませんし、(借り入れが1件だけで自殺してもカウントされていますので)こういった強引なこじつけが、良く出来ますね。

 

 長妻昭衆院議員(民主)の質問主意書を受け、金融庁アコムアイフル武富士、プロミス、三洋信販の大手5社と、契約先の保険会社の双方に聞き取り調査し、明らかになった。
 業界団体の調べによると、消費者金融利用者の1人当たりの平均借入件数は大手以外も含め3.2社。今回のデータでも複数の業者から借り入れていたケースがあり、実際の人数は明らかにされていないが、支払総件数に占める自殺件数の割合は9.1%に上る。厚生労働省の05年人口動態統計では、20歳以上の死亡者に占める自殺者の割合は2.8%だ。


→3649件の中の自殺者は9.1%なのですね。それは分かりました。前述で私が指摘しましたが、「複数の業者から借り入れていたケースもあり」・・・やはり、馬脚を現しましたね。と言うことは、複数でない方も相当数いらっしゃったようなので、複数、しかも多重債務と呼べる方が何人自殺されていたのかの実数を、是非教えていただきたいです。(多分、この記事の趣旨にそぐわないので、公表出来ないと思いますけど)
悲しいことですが、消費者金融をご利用になる“事情”をお持ちの方は、ご親族などに頼れないから、というのが厳しい現実です。多重債務であろうとなかろうと、複雑な環境のお客様は多かったですね。消費者金融を利用しない方よりは悩みもそれだけ多いようで、それが原因での自殺というのも、かなりの件数であったように記憶しています。人が自ら命を絶つ事情は、何も借金に限ったことではないのです。

 

 この保険は「消費者信用団体生命保険」と呼ばれ、大手消費者金融から借り入れる際、契約と同時に借り手を被保険者とする加入手続きが取られている。借り手が死亡した場合、保険金は消費者金融に支払われる。契約後1~2年以上たったケースでは死亡診断書などの提出を省略できるため、3万9880件の中には死因が不明のものも多数含まれている。金融庁は、保険金が支払われた総数に占める実際の自殺件数の割合は10~20%に上るとみている。


→39880件の中の3649件ならば、おおむね10%ですよね。これは正しいでしょう。死因が不明のものも多数含まれているそうですが、それがすべて自殺みたいに聞こえるような表現は、いかがなものでしょう?

 

 この保険については、借り手の大半が加入させられていることを知らず、消費者金融が遺族に死亡確認をせず保険金を受け取っているケースも多い。また、借り手が死亡しても保険金で債権を回収できるため、厳しい取り立てを誘発しているとの指摘もある。
 金融庁は、自殺者の正確な人数などを把握するため、さらに詳しい調査を進めている。

→“借り手の大半が加入させられていることを知らず”とありますが、借り入れ時の契約説明では必ず行われています。契約者の方の興味は、「お金を借りること」に集中しているので、付帯説明を聞いてもらえなかったり、聞いていても上の空だったりすることが実際には多いですね。それでもきちんと説明するのが消費者金融の責任と言われればそれまでですが、常識的に考えれば、こういった説明を完全にご理解いただくことが無理な話だと言うことは(接客業をご経験の方であれば特に)お分かりいただけると思います。
それと、“借り手が死亡しても保険金で債権を回収できるため”とありますが、前エントリーでも触れた通り、団体信用生命保険への掛け金は、保険により支払われる債務の数倍にも及びます。そうでなければ保険会社がこのような保険を受けるはずがありません。また、この保険の受取人は、契約の趣旨からも保険契約者である債権者です。債務者が受け取れないのは当たり前の話です。実際にはご遺族の方が相続放棄はしたくないが、消費者金融の債務は支払いたくない場合に初めて重宝がられる性格のもので、保険金詐欺や保険金殺人と同レベルで捕らえているこの新聞の論調には、呆れるほかありません。
日本人の嫌なところです。勝ち馬に乗っている(と思っている)人間が、弱い立場(と思われる)人間を集中攻撃する・・・まるでいじめの構図ですね。
もっとも私が消費者金融業界にいた頃は、はるかに激しいバッシングに遭っていましたけどね。

ひとつ、思い出話を。
確かに、自分が督促電話をかけた後で、お客様が亡くなられた、しかも自殺で・・・っていうケース、私も何回も遭遇しましたよ。
それを知った日には、そりゃあひどく落ち込みます。担当者だって人間ですよ。
亡くなられた方にはそれなりの思いもあったのでしょうが、自殺するんなら、先にどうして相談してくれないの、と悔しい思いをしたことも1度や2度じゃありません。一応気を遣って「ご家族にご不幸でもあったのですか」とか「お体が悪くてお仕事難しいですか」とかなるべく事情を伺うようにして、支払引き伸ばしとか利息の減免とか、場合によっては他社の分を立て替えてしまうこともあったのですけど。人の役に立ちたくて金融をやっていたのに、こういうときの衝撃は何回味わっても辛かったです。
消費者金融は、生き血を啜る商売じゃないです。悪質リフォームとか、先物取引とか、布団の押し売りとか、世の中にはひどい商売沢山あるのに、消費者金融は“お金貸している”だけで悪者にされてしまいます。29.2%が高金利とか、良く言えたもんです。リスクも見越したコストで、元本が低額ですから、人件費・諸経費考えればこれでもギリギリのコストです。

最近では、貸金業規制法修正案に、特例金利を認めるのはけしからんと後藤田さんが政務官を辞任などというパフォーマンスをされていたり、
http://news.goo.ne.jp/news/reuters/keizai/20060906/JAPAN-227353.html?C=S
与謝野さんは相変わらず消費者金融を叩き続けていらっしゃいますし、皆さん来年の参議院議員選挙を見越してパフォーマンスに躍起ですね。貸金業業界は、厳しく叩いておけば一般大衆受けは良いですからね。小泉流ワンフレーズのパフォーマンスと近いものがあるでしょう。

でもねえ、毎日新聞の【多重債務取材班】さん。もっと勉強してください。それと、記事の脚色は止めてください。ペンが腐ってますよ。あなた方の戦うべき相手は、他にもっともっとあるはずです。