幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

そもそも。

三洋信販が業務停止 全920店で12日間(共同通信
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/business/20070115a2760.html?C=S

三洋信販が、1月15日から12日間の営業停止処分となりました。
原因は、取引履歴の改ざん、と報道されていますが、実際に何をどのように“改ざん”しているのか、という報道を、私は見かけていません。本当の所は改ざんなどというよりは利息制限法への引きなおし請求に伴う開示請求で、保有年限を過ぎて正確な開示が出来ない取引履歴を修正してしまったことが、“改ざん”にあたると言われているような感じがしますが、どうなんでしょうね?

でも、この開示請求ですが、本当に開示する必要があるかと言うと、私は「ない」と考えています。

第一、三洋信販は、債務者との当初の契約書どおりに請求し、その通りに返済されているのですから、入金の都度交付されている領収書に記載された内容だけで、充分なはずです。(ATMによる明細も含めて)貸金業規制法では元々、書面の交付の規定では、契約番号と前回の返済日からの日数、元利金の内訳を、返済の都度明示すれば足りていました。これをきちんと交付しているにも関わらず、「遡って最初から出せ」と言うほうが、論理的には矛盾しています。もう受け取っているんですから、それをもう一回出してもらわなければならないような、無くすほうに責任があるでしょう。

三洋信販に限らず、取引履歴を開示しようにも、現実的には記録が残っていない貸金業者が殆どです。限度額の変更や途中完済などで契約更新が行われれば、古いほうの履歴はシステム上終了させてしまい、履歴として明細は破棄して入金された利息と元金の合計程度しか残していない業者が殆どのはずです。入金履歴を全部残すようなシステムは、どんな大会社でも作れないでしょう。膨大な開発費と、維持管理費用がかかりますから。

そもそも、一度完済してしまえば、途中の個別明細で金利の違反が認められない限りは、“契約終了”として遡って開示を要求されるケースがありませんでしたから、そういうシステム設計を行っている会社が殆どであることもうなずけます。

現在の貸金業規制法が制定された昭和58年前後に、新しい法律の実効性を高める為に、法律をちゃんと守る代わりに認められた権利を規定の中に盛り込みました。貸金業がビジネスとして成立しうる金利を合法的にする規定を盛り込んだのです。当時の政府が、出資法と利息制限法の二重規制から出資法の罰則規定そのものの実効性が失われ、有名無実化することを恐れたからです。
すなわち、ちゃんと領収書を発行すること、契約書を交付し事前に契約内容を説明すること、取引台帳を管理し、現在の入金についてはいつでも取引内容を回答出来るようにすることで、利息制限法を越えた部分でも、出資法では処罰しないという金利ゾーン(いわゆる“みなし弁済”)を作りだしたのです。

これは、現在では確かに二重規制でおかしな話に見えるかも知れませんが、当時のように、新しく制定される貸金業規制法そのものがちゃんと効果を出せるかどうか分からない状況において、法令を遵守させる絶大な効果があったと言えます。これだけちゃんと法律を守れば、利息制限法違反でも許してくれる、と国が認めたのですから、守る側にも「大義名分」が出来ましたので。

この貸金業規制法を実効法として有効にしていったのは、他ならぬ貸金業者自身です。貸金業規制法により都道府県単位で設置された貸金業協会が、貸金業者の先頭に立ち、貸金業規制法の遵守を同業者へ浸透させて行ったのです。この、貸金業協会の指導には、「飴と鞭」にあたるこの規定は大変に効果がありました。

ところが、現在はどうでしょう?

当時の“お約束”だったみなし弁済も、最高裁自体が手のひらを返し否定しました。
国も、商工ローン問題で管理責任を問われた大蔵省(当時)が目先を変える為に金利規制へ話を摩り替え、当時の出資法上限金利だった40.004%から一気に29.2%まで引き下げを行ってしまいます。当時も商工ローンの会社へは貸金業協会から何回も指導を行っていましたが、彼らは大蔵省(官僚)とのつながりを理由に一切貸金業協会の指導を拒否していましたから、何か密約があったのでしょう。それらの追求を逃れる為に、さっさと公明党を使って高金利撲滅キャンペーンを張り、商工ローンの問題は一切追及されることなく出資法の上限金利だけが引き下げられてしまいました。

40.004%には理由がありました。利息制限法の上限に合わせていたんです。利息制限法は遅延損害金として、遅れれば20%の倍の金利を認めていた規定がありました。20%の倍で40%、貸金業者の利息計算で主流だった「日歩計算」になじむように、日歩で表示出来る40%のすぐ上の数字が、40.004%だったのです。
(しかし、汚いことに政府はこの引き下げに乗じて利息制限法を改正し、この遅延損害金の規定を削除してしまいました)


今回の三洋信販の営業停止処分は、

1.契約時に説明されている条件を違反するような内容はひとつもない
2.貸金業規制法上で台帳の保管期限として規定されている年限分を超える履歴を請求している
3.上限金利そのものが、貸金業規制法成立時の上限を下回るものである
4.取引の都度、明細は交付されているので、開示請求そのものに応じる必要がない

これらの理由から、そもそもが営業停止処分を受ける必要がないと考えます。

金融庁・政府関係者に猛省を促したいのは、貸金業金利規制で官製事業にしようと考えるのは構わないですが、その影響で被害を蒙るのはいつも最下層の人間だと言うことを、忘れないでいただきたい。

金利を規制し「悪質な」貸金業者を駆逐しているように見せかけは居ますが、その実駆逐されているのは常に善良な法律を守る業者ばかりで、本当に規制されるべき悪質な連中は闇に下り更に被害者を増やしているという事実に、ちゃんと目を向けていただきたい。

この世の中は、エリート達の玩具じゃ無いんです。

庶民金融が消滅する日―上限金利引下げの落とし穴…

庶民金融が消滅する日―上限金利引下げの落とし穴…

  • 作者: 吉野 正三郎
  • 出版社/メーカー: 日新報道
  • 発売日: 2003/02
  • メディア: 単行本