去年の夏に上げたエントリーに、コメントが思いがけずもらえて嬉しかったのでもう一つ、八田雅弘のアルバムをご紹介したいと思います。
ソロアルバム2枚目、「俺は人の海を櫂も持たずに船をこぐ」です。
発売:1985年7月
収録曲
SideA
パントマイムROCKは歌わない
炎の魂
ベイエリア午前4時
10カウント・ゴングは鳴らすな
SideB
ジャングル・タウン
BAD SHAKIN' LOVE
シャット・アウトの夜
泣かないでHAPPINESS
ジニー
レコードのジャケットをデジカメで撮るのって難しいですね。上下がどうしてもゆがんでしまいます。
前にご紹介した「星が降る前に」は、LPの他にCDも持っているのですが、こちらはLPのみ。CD化して見ましたがやっぱりメロディーとアレンジが合わないですね。じっくり聴けば聴くほど編曲の方の意図が、曲のコンセプトとずれてるように感じます。
詩の内容は恋愛をベースにしながらも、悩みつつ人生を真剣に、価値のあるものにしたいともがいている若者って内容で、メッセージ性もかなりあるものです。でも、その詩の上にうまく内容を消化し切れてないメロディーがくっついている上に、アレンジはまるで歌謡曲なんです。
若い頃は「こりゃ、アレンジだけの問題だな」などと思って聴いていましたけど、この年になって改めて聴いてみると、このメロディーをいい感じで編曲するのはかなり難しいですね。こういうアレンジでも仕方ない部分もあるな、と思えました。
SideA-3の作詞が高橋研ですが、それ以外は作詞作曲:八田雅弘、編曲:佐藤準です。
佐藤準って、こういう経歴の方だったのですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E8%97%A4%E6%BA%96
何だかこれを見ると、このアレンジも非常に納得してしまいました。
このアルバムを買った当時は私もまだ音楽を続けていました。本気でプロとしてチャレンジするのか、それともサラリーマンとして普通の人生歩んでいくのか、真剣に悩んだ頃に聞いていました。
当時から私も冷めるところは冷めていて、このアルバムを聴いて「結局、作詞作曲全部やっても、アレンジまで自分たちでやれないと、こんな風になってしまうんだな」って達観した記憶があります。
レコードを出すまでには、もちろんレコード会社との契約が必要ですが、もし契約できても自分の作品を出すまでにはいろいろと横槍が入って来て、何だかぐちゃぐちゃのもの出されてもいやだなあ、と。
このアルバムと同時期で、当時のCBSソニーがミュージシャン発掘のプロジェクトみたいなものをやっていて、その中から出てきた人たちに比べると、この八田雅弘の作品は恵まれないなあ、なんて思ったりしていました。いい例が尾崎豊ですね。彼も八田雅弘と同じくソロでしたが、アレンジャー・プロデューサーに恵まれています。尾崎の詩とメロディーを生かしたアルバムのアレンジも見事ですが、素のキャラクターを生かした売り込み方が良かったように思います。
「俺は人の海を櫂も持たずに船をこぐ」は、尾崎の「回帰線」にかなり影響受けていますよね。リリースがちょっと後ですから、製作現場は影響をかなり受けているはずです。アルバムの構成とかは無理やり似せてしまっているようにも感じます。こんな話しても、なかなか分かってもらえる方が居ないところが、辛いですけど。