幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

学力の新しいルール。

「学力の新しいルール」という、陰山英男さんの本をご紹介します。

陰山さんは広島県尾道市の土堂小学校で、校長先生として子供たちの学力向上の為に、色々な取り組みをしてこられました。

陰山さんと言うと、「百ます計算」のイメージが強いのですが、それも土堂小学校での陰山さんの実践の中では、ほんの構成要素の一部にしか過ぎないものです。

本当の学力は、親が育てるものなんですよね。それを再確認させていただいた、とても良い本です。

学力の新しいルール

学力の新しいルール

  • 作者: 陰山 英男
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/09/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


私が“ゆとり教育”の怖さを一番実感したのは、息子が小学校に入学したときでした。
学校で渡された教科書を、手にとって中を見たときの衝撃といったら、それは恐ろしいものがありました。
「こんな薄っぺらな本で、ちゃんと学力がつくのだろうか?」と。しかも中身は絵や写真ばかり。子供が興味を持つことに腐心している様子が見て取れるような、教科書ばかりです。

ゆとり教育”が叫ばれていて、学校のカリキュラムがだんだん減らされているとは聞いていましたが、実際に目の前で見ると背筋が寒くなったのを、未だに覚えています。

その“ゆとり教育”が始まったきっかけが、受験戦争問題です。詰め込みは悪だ、という単純な発想からですね。受験戦争は、子供が学ぶ内容が多すぎるから起きるのだと。

でも詰め込み排除=ゆとり教育、と称してカリキュラムをどんどん減らしていった結果は、学校の授業だけでは知識の量が不足するからと、親たちの公立学校不信を招き、校外の塾通いが学校とセット化したような状況まで招いてしまいました。公立不信は付属校や国立校などの中高一貫校への人気増大を招き、受験戦争が中学・小学まで下がって、より激化するという悪循環となってしまっています。

ゆとり教育と言われるカリキュラムの中には、応用力・創造力を高める教育を目指すといって、基本的なトレーニングを詰め込み教育・無意味なものの象徴のように軽視してしまいました。反面、見栄えの良い総合学習などばかりに時間を取られ、丸暗記は罪とまで言われそうな現状は、本末転倒としか思えません。基本的な「読み書きそろばん」を疎かにして、英語だパソコンだ、などと膨らませていくのは、砂の上にブロックを組み上げたものに過ぎないことが、この本で実感出来ます。

こんなカリキュラムの空洞化した公立に入れたくないから、受験を小学校・中学校からさせる傾向が顕著なようですが、その受験勉強って本当に子供の為になるものでしょうか?

有名校の試験問題を見ても、人気が高まれば高まるほどふるい落としのためだけの問題へと変化して行きます。そんな問題を解く能力を、睡眠時間を削って塾通いして育てても、単に受験のテクニックに長けるだけで、社会人として生きていく為に、本当に必要な知識や能力が身について行くはずが無いでしょう。

「受験だから為になる知識が身につかないのは仕方が無い」「受験が終わるまでの間だから」などと言い訳しても、受験勉強により失われる時間の大きさは、どこで取り返すのですか?

私の家は、塾にも通わせず、中学受験もさせていません。でも、朝食はしっかり毎日食べさせています。夜は毎日21時に寝て、朝は6時に起きています。私が出張で不在にしない限りは、家族3人揃っての朝食にしています。ゲーム機はもちろん家では絶対にさせませんし、テレビすらも時間を制限しています。パソコン・携帯に至っては、使わせる予定はありません。

私の家は幸いにも双方の実家から遠いので、「6つの財布」がまったく機能していないという幸運もありますが、例え祖父母に与えられても私が考えて「分不相応」なものはきっぱりお断りします。こういうことは、家の中で、はっきりと親父が嫌われ役で良いんじゃないかと思うんですね。

親が、子供に嫌われることを恐れすぎていませんか?物分り良すぎませんか?一生懸命受験勉強しているから、ご褒美にDS買ってあげるとか、モノでつっていませんか?

受験勉強で取られる時間の代わりに、真剣に子供と会話してください。小学生が勉強だと言って深夜の22時以降起きているなんて、生物学的には不自然過ぎます。そんな無理なことさせないで、子供は21時までには寝かせて、親とちゃんと会話の時間を作って、きちんとした家庭団欒の場で、手のかかった食事を食べることが出来れば、一番良いんです。

その、生活面での“基本”の上に、学校で「寺子屋教育」を実践してゆけば、子供たちの学力は劇的に伸びていくものなんですね。土堂小学校でのデータが如実に示しています。陰山さんの説明されている「脳は鍛えるもの」と言う考えからすれば、暗算の反復により脳の組織トレーニングを行うことは、非常に効果があると思います。

問題は、これがひとつの小学校の実験で終わっていることです。良いことが分かっているのですから、日本全部で導入するべきなのに、それが出来ない。
その一因も、家庭即ち親の側にあるような気がします。何もかも人任せにしすぎです。特に、子供に嫌われそうなことについては。今の学校教育は、義務教育じゃ無くて「権利教育」ですね。親が「義務教育なんだから、教育は学校の責任だ」なんて自分の権利を主張しすぎです。それでは一体誰の子のことなんですかと、問い詰めたい気分です。子供の教育は、あくまで”義務”教育、すなわち、教育を受けさせる(教育を施す)ことは、親の義務なのです。


陰山さんは、学力の新しいルールを、寺子屋方式への回帰(つまり、反復学習への回帰)と、生活習慣の改善との2本の柱で説明されています。その効果は、土堂小学校での取り組みがはっきりと証明しています。

子供の学力を育てるのは、学校でも、他の誰でもない、その子の親自身なのです。

教育出来ない日本の親・・・の象徴的な記事がありました。親子は友達じゃないんですよ。厳しく「叱る」ことの出来ない、体罰も与えられない親は、親失格です。日本の場合、まず「親育て」が先決かも知れません。