幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

PLCの是非。

この記事は2006年12月8日にアップしたものですが、PLCの拙速な導入に対する反対の意味も込めて、リンクを追加し、しばらくトップに置かせていただきます。(2007年3月10日)

電力線通信って、ご存知ですか?コンセントに繋ぐだけでインターネットが出来るというモノで、“夢の通信”などと宣伝されております。

http://www.plc-j.org/index.htm (高速電力線通信推進協議会のページ)

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060915/248202/ PLCって何だろう?(IT Pro)

PLCの原理を簡単に説明しますと、電流だけが流れている電線に電波を送り込み、電波の上にLANなどで使う信号を混ぜて送ってしまうというものです。(目茶目茶ラフな説明ですね)

今のパソコンであれば、インターネットを見るには、電源のほかにLANカードなどを介して、ADSLや光ファイバーなどのネットワークへ接続する必要がありました。でも、この電力線通信を使えばコンセントからPLC用のモデムを使用してネットワークに接続出来る為、LANケーブルなど「もう一本」線を繋ぐ必要がなくなるんです。(実際にはコンセントへ電源を繋ぎ、LANケーブルはPLCモデムへ繋ぐんですけど)

それと、一般家電品のようにコンセント以外の接続を行わない電化製品においても、電源部にモデムの機能(電源とインターネットの搬送波を分離する機能)を持たせれば、コンセントから簡単にネットワーク制御が可能になるっていうものです。

パソコンは配線の煩雑さが減りますし、家電もネットワーク対応になって、例えば外出先から携帯でエアコンのスイッチを入れたりとか、ビデオを予約したりとかが可能になってくるということです。

こう見てると良い事ばかりのようですが、果たして本当にそうでしょうか?

現実的には、PLCの導入は、日本お特異の外圧に負けちゃった部分も少なからずあるように思います。これを見ると、思いっきり外圧がかかっていますしね。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0504/09/news008.html
この記事によると、EUではPLCの導入によってブロードバンド環境の普及が促進され、「消費者の為の投資と低価格化が促進された」そうですが、具体的には何なんでしょうか?ちっとも説明はないですね。とりあえず、「だから日本も使えよ」ってだけなんでしょう。

EUでは確かに、日本に比べれば遅れているブロードバンド環境の普及に役立ったかも知れませんが、何もわざわざ通信速度で劣る可能性が高いPLCを導入しなくても、日本はブロードバンド回線の普及率が欧米に比べてはるかに高いんですよ。
http://nikkeimedialab.jp/blog/2005/07/post_0736.html
その“普及の遅れた”国に、日本がPLCを導入しないのはおかしいなどと、口出しして欲しくは無いですね。

第一、欧州ではADSLなどの料金が、普及が遅れたためにコストが高く、PLCも価格競争力を持っていましたが、ADSLの価格が下がるにつれPLCの価格優位が薄れて、スペインなどのように新規にPLCの展開を見合わせている国もあります。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060915/248231/?ST=nettech&P=5

それと、消費者の為の投資って言ってますけど、PLC導入に投資されたインフラを一般の消費者が使うには、機器の買い替えが必要です。今使ってるエアコンや冷蔵庫が、PLCですぐにネット制御出来るなら良いですけど、全部買い替えが必要です。
それに、日本で未だにブロードバンドを導入していない家庭が、PLCのメインターゲットだと思いますけど、そのような家庭が「コンセントでネットワーク制御出来る機械」を喜んで使いこなせるとは思えないんですよ。むしろ飛びつくのは光ファイバーも既に導入していて使いこなせている家庭がメインになる気がします。

それだったら、こんな海のものとも山のものとも付かないPLCを新規に導入するよりも、現在使っているブロードバンド回線のコストを引き下げ、速度を上げることのほうが、よっぽど大切なように思えてしまいます。私に言わせれば、PLCなんて“必要ない”です。

で、最終的に潤うのは、PLCの対応機械を売りつけるメーカーぐらいです。

なんかこう、胡散臭いものを感じてしまうんですよね。こんなに拙速に事を進めるなんて、利益誘導とか疑われても仕方が無い様に思います。

PLCには、「必要性が無い」ってこと以外にも、搬送波に使う電波が、PLCの速度を上げる為に短波帯まで引き上げてしまったことによる、妨害電波という重大な問題もあります。

従来PLC用に規定されていた周波数帯10KHzから450KHzでは速度が出ないので、今回は2MHzから30MHzの使用が認められました。ここは短波ラジオ放送とアマチュア無線が元々使用している周波数帯で、そこにPLCの電波が後から割り込みしてかぶってくるのです。元から使っていた人から見れば、それは妨害電波以外の何者でもありません。

でも、「PLCは電波に乗せてデータを運ぶと言っても、電波が電線流れてるだけなら、外に出ないんじゃないの?」とお考えになる方がいらっしゃると思います。でも、その電線は、日本の場合どこをどうやって通って来ているでしょうか?電信柱があって、空中を張り巡らされた電線の中を、このPLCの電波が通ることになります。

このページでも説明されていますが、平行して走っている電線を流れる電波は、電線がアンテナとなって外部へ漏れ出してしまうのです。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060915/248231/?ST=nettech&P=1

つまり、電線すべてが最悪の場合、アンテナになって妨害電波を発射してしまうんです。
もちろん、これに対する対策を考慮した上での今回のPLC解禁ではあります。その対策を一部ご紹介しますと、コモンコードフィルタと呼ばれるフェライトコアをアース(接地線)へ挿入することで、漏洩電流を低減させるという技術があります。
その効果は、こちらです。
http://www.plc-j.org/download/leak.pdf

24dbの低減効果があるそうですね。でも、良くこの図を見ると、10MHzから20MHzまでの間で、最大50db以上の漏洩が残っているんです。これじゃあ、完全な対策とは言えません。

この話題を取り上げた個人の方のブログやHPでは、「アマチュア無線なんて殆どやってる人居ないんだから関係ない」とか「電磁波なんて普通でも出まくってるんだから関係ない」なんて乱暴な論調が多数を占めているようです。でも、日本は欧州と違って電信柱があり、ブロードバンドがはるかに普及していることを考えると、それ以上にPLCへインフラ整備のコストをかける必要が、どこにあるというのでしょう?

それも他人に害を与えない仕組みならともかく、先に使用していた短波放送やアマチュア無線、果ては天体観測に必要な電波望遠鏡にまで悪影響を与えるPLCが、解禁される必要があるとは、私には絶対に思えません。

http://www.asj.or.jp/news/020708.html

一部のメーカーの陰謀で、こんな乱暴なことを許して良いんでしょうか?

2007/3/10リンク追加:松下BL-PA100のノイズテスト(BL-PA100は欠陥モデム

http://home.b01.itscom.net/aoyama/ja1idy/59colum0614.htm

 

もう一度PLC導入は、見直すべきでしょう。