幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

久し振り。

私は、野球を本格的に始めたのは小学6年生からでした。実はその時にまず取り組んだポジションがキャッチャーでした。

ひとりで座って、チームの他の全員の様子を見る。ピッチャーの調子や相手打者の様子を見ながら、次に投げるボールのコースを変えてみる・・・そんな駆け引きを小学生のレベルながら楽しんでいて、キャッチャーというポジションが自分にとても合っていると、考えるようになって行きました。

当時のプロ野球では、もちろん讀賣全盛です。王・長嶋というスター選手、そして私の住んでいたような地方では、プロ野球といえばテレビ中継でしか触れることの出来ない世界・・・というのが相場でした。

ですが、キャッチャーを始めた私には、プロ野球選手でもやはりキャッチャーが気になります。当時まだ現役だった野村克也というキャッチャーの存在を知るのは、新聞のスポーツ欄に踊っていた「月見草」という文字からであったことを、思い出します。

私が、野球というスポーツに惹かれ、興味を強く抱くようになったのは、この野村さんの影響が大きいです。

小学生時代からは、「高卒テスト生で入団し、世界の王に次ぐホームラン数」「キャッチャーの現役でありながら、監督を務める」程度の情報しかありませんでしたが、自分がキャッチャーをやった事もあって、野村克也という選手の記録を、追っかけるようにはなっておりました。
一番は、高校3年生の時に野村さんの執筆されたこの本を読んだ事でしょう。この人は単なる野球人という括りを超えているな、というのが当時の率直な感想でした。

背番号なき現役―私のルール十八章 (1981年)

背番号なき現役―私のルール十八章 (1981年)

  • 作者: 野村 克也
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1981/05
  • メディア: -
 




そんな私が、フラフラと訪れた書店で、平台に積みあがっていたこの本を手に取るのに、そんなには時間がかかりませんでした。

野村の「眼」―弱者の戦い

野村の「眼」―弱者の戦い

  • 作者: 野村 克也
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2008/03/26
  • メディア: 単行本
 




まだ発売されたばかりだったのですね。

f:id:makin2015:20171111232718j:plain


買ってからずいぶん経つのに、日頃の忙しさにかまけて、今日やっと読み終わりました。
集中して読めば、重い内容ではないので、3時間もあれば読み切ってしまえる内容です。でも、この本の内容は、単に野球のことだけには留まらない教訓にあふれていると思います。

弱者の戦いなどという、刺激的なタイトルが付けられていますが、書かれている内容は野村さんの南海ホークスヤクルトスワローズでの監督時代の経験談です。“野村再生工場”などと呼ばれ、ピークを過ぎた選手が野村さんの下で再び輝いていった事例が、監督の立場から語られていますが、これは私の現在の立場から見ても非常に示唆に富んだ、参考になるものです。

野球の監督と、企業の管理職は比較されることが多いですが、こと人心を掌握し、部下の能力を引き出していく・・・という観点では、プロ野球の監督も企業の管理職も同じではないでしょうか?

適材適所、能力適性を見抜いて、やる気を引き出す。考えてプレーすることの重要性。。。すべてが野球だけではなく、普通の会社員にとっても参考となるものばかりです。

前出の「背番号なき現役」を執筆されたときは、野村さんは今の私と同じ45歳でした。70歳を超えた野村さんが、その時よりも深まった経験で語ってくれるこの「弱者の戦い」、野球に興味のない方でも、一読の価値ありです。

ただ、私が一番印象に残ってしまったのは、南海ホークスにテスト生として入団するまでの経緯です。父を失い、病弱な母を抱えて何とか生きて行こうと考えた手段が野球。峰山高校時代の恩師が何とかプロにしてやろうと手紙までしたためていたという行には、運命のいたずらを感じます。こういった経験があったから、その後プロ野球界に入っても、自らの力で考え工夫しやり抜く事が出来たのでしょう。

実は「弱者の戦い」などではなく、こういう人こそが真の「強者」なのだという思いを、強くしました。