幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

読みました。

“「バレンタイン流マネジメント」の逆襲”

私自身、ボビーの印象が2006年シーズンで大きく変わっていました。と、言うより正確に理解せずに、ボビーを従来の日本の“監督像”で、見ていたんでしょうね。

小坂の放出、今江の2番起用、日替わりの打線・・・そして外人偏重とも思える選手起用も、この本を読み終えるまで、「まさか、そこまで考えてはいないだろう」と思っていましたが、本当はそれ以上に現実的だったのですね。

小坂の放出も、最初はスンの行動とリンクして行われたものだとばかり思っていましたけど、今季の正人・塀内の使われ方を見ていると計算づくでボビーが放出を決定したのではないだろうか、と、今季の途中から考えるようになっていました。その通りだったのですね。確かに今年讀賣ではペースを乱して良い結果が出ませんでしたが、小坂のことですから来年は同じ失敗をしないでしょう。ボビー自身も、小坂の成功を祈っていると思います。マリーンズでは起用する方法が、彼(ボビー)の下ではありませんでしたから。

今江の2番起用・・・色々と批判を呼んだ起用でしたが、ボビーは去年の日本シリーズ初戦でも、今江を2番に起用していますね。ボビーは今江を“最高のバッター”と評価しているから、2番に起用したのかな?と今シーズンの終盤には私も考えるようになっていました。確かに今江は天賦の才能を感じる数少ないバッターです。下手にあれこれいじられるよりも、自由にさせるほうが彼の為でしょう。「来たボールに自然に反応して打つ」だけで充分なバッターです。そのことを最初から見抜いていて、先発にも優先的に起用していたんですね。

今季の途中で、私が一番懸念したのは、メジャーの監督時代失敗したボビーの「独裁性」で周囲が離れてしまわないか、と言うことです。チーム内の必要な情報がボビーに上がっていないな、と感じる選手起用が今年は多かったので。ボビーの一番優れている部分だと私が思うのは、選手の調子を見抜く観察眼なんですね。今年はそれが微妙に狂いだしていた。その結果が交流戦以降の失速であり、起用する選手全てが結果が出ない・・・と言うことに繋がっているのではないかと、考えるようになっていました。

それはそれでどちらかというと当たりなのでしょうが、それよりも選手自身が「勝ち」を意識して萎縮してしまったことのほうが、原因として大きかったと、この本では触れられていました。今季の終盤は、下手をすれば無気力とも取れるプレーが散見されました。サトなどは自身のブログで「選手は一生懸命やっている」などと理解を求める発言をしたりしていましたが、本当に手抜きなどではなく、むしろ一生懸命やりすぎて“enjoy”出来なくなっていたのでしょう。去年の出来すぎた成績のせいで、勝つことを義務付けられているように感じ出したナインは、野球をPlayせずにWork(義務)としてやり始めてしまった。

とどのつまりが、去年勝ったのだから今年も、と思うには肩の力が入りすぎていたんでしょうが、結局のところ力不足には違いないんですよ。

enjoyを下手に日本語訳すると“楽しむ”になってしまいますが、ボビーの言うenjoyは極限の緊張状態でも自分の力を充分に出し切って、野球を楽しもう、と言うことです。これは半端な状態で実現出来るものではないです。

去年の状態であれば、適度な勝利への渇望が、無駄な肩の力を抜いて最終的に野球をenjoy出来た形になりましたが、それは単なる偶然のもたらした産物と見るのが妥当でしょう。

ボビーの周到なデータ野球を持ってしても、(去年の日本シリーズの第三戦、藤川とマティ・将の対戦の描写で、その徹底振りがよく分かりますが)今季の一度狂った歯車は元に戻らなかった。ボビーの起用が凶と出たときに、控えに回った選手から出るコンプレイン、WBC出場選手とそうでない選手との温度差、外人起用により控えに甘んじる選手の脱力感など2005年シーズンとは明らかにベンチ内が違うムードで覆われているように、見えました。

弱小チームを引き上げたカリスマ性のある指導者は、その強烈な個性からメジャーでも好き嫌いのはっきり分かれる“クセのある”監督でしたが、ここマリーンズでは言葉の壁が良い方向に向いていて、そこがボビーを親しみやすくさせているのではないだろうか、とも私は見ています。でもそういう利点をもってしても今年のマリーンズには傍から見ていても不協和音が聞こえて来ました。それはボビー自身がこの本でも語っています。「自分自身はバレンタイン監督の下でプレーするには問題がある。それは、プレーヤーは常に試合に出たいと思っているからだ」

2007年シーズンは、ボビーはどのようなやり方で、チームを引っ張るのでしょうか?ボビーの頭の中には既に来季へ向けての編成が描かれているのでしょうが、それが最終的にはっきり見えるのは、去年の年末に小坂の問題が起きたように、年末まで待つしか無いのかも知れません。小坂とスンの放出で出来た資金は、来季への補強に回されるでしょうし。

この本を読み終えて、ちょっとゾクゾクしてしまいました。