幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

疑問。

先日は、路線バスの車椅子対応について取り上げましたが、今回は本丸です。

「鳴物入り」で首都圏を中心に旧来のクラウンコンフォートや日産セドリックの旧タクシー専用車両からの置き換えが進んでいる、トヨタの「ジャパンタクシー」。

これ、なぜかUDタクシーなんですよね。

matome.naver.jp正直、こんなに手間のかかるスロープ設置と、車体の左側からアクセスするスロープでは、日本の道路事情を考えると車椅子での乗車が出来ない場面が、かなり多くなると思われます。実際福祉車両で車椅子対応の車両はすべて後ろのハッチを開けてスロープを出し、乗車するものばかり。ジャパンタクシーは、タクシー会社の要望でプロパンガス燃料で走るためにガスタンクをリアに設置したことで、リアゲートからのフロアをフラットに出来なかったことから、この左横からのアクセスになったのですが、それでは車椅子での使い勝手がよくなるはずはありません。

日本の住宅地で、ちょっと道の狭い路地に入り込めば、車がすれ違えないような幅の道路も多くあります。このジャパンタクシーの車椅子スロープは、車幅二台分以上のスペースが必要で、そのような路地に入り込めばスロープの設置は不可能です。

 

また、流しで手が挙がってスロープ設置を求められた際にも、それだけの横幅のある歩道が、いったいどのくらい日本は整備されているのでしょう?更には雨天時はどうするのでしょうか?リアゲートから乗車するのであれば、開けたゲートが屋根代わりになりますが、横からの乗車の際には、準備が出来るまでは「雨ざらし」になってしまいます。これはドライバーも車椅子のお客様も同様です。

 

こんな代物を強要しておいて、国土交通省は乗車拒否でタクシー会社と運転手を処分すると言い出しました。

www.asahi.com
これではあまりに自動車会社寄りの偏った行政指導ではないですか?
まずは、現状のジャパンタクシーの構造の見直しが先でしょう。通常は車椅子対応のような特殊作業は全員が技術を習得するものではなく、研修を受けて一部の運転手が対応します。すべてのタクシーを利用されるお客様の中で、車椅子のでの乗車を希望される方は単純に人口比で考えれば0.8%程度です。そんなレベルの可能性に対し、すべてのタクシー運転手に研修を義務付けるのは、いくらUDが必要なことだからと言って、行き過ぎではないでしょうか?

 

※数値の算出根拠

タクシー利用者数 2017年 319,973,222人 1日当たり 876,638人(東京都)

 車椅子利用者数 2015年(予測値) 33,781人 (全国)

これを仮に東京都のタクシー利用者数の全国比をあてはめて車椅子利用者数の東京都分を算出すると、2017年の全国利用者数は1,421,999,507人であり、東京都はおよそ22%となる。となると東京都の車椅子利用者数は33,781×22%=7,431人が相当すると思われる。 

仮にこの全員が毎日必ずタクシーを利用するとしても、その利用率は 7,431/876,638 で0.0084 となり、0.8%に過ぎない。


この為に大半のタクシー車両を車椅子対応にするのは、いかにも無駄ではないでしょうか?それは簡単に床下に収納されたスロープを引き出すだけなら、嫌がる運転手はいません。ところがこのジャパンタクシーのスロープは二つに分かれている上に、車内も助手席を最前方にスライドさせ跳ね上げた上で、リアシートの座面もすべて跳ね上げ固定しなければなりません。さらにはリアシート下にあるスロープとトランクに収納されたスロープを組み合わせ、それをベルトで固定した上でないとスロープを車体に固定出来ないのです。

これを、普通の企業で社員に研修して、「業務で必要だから」と研修しても、おそらく100人受講して習得できる人は10人もいないようなレベルの煩雑さです。それを、0.8%の可能性のために、100%出来るように準備しなければ行政指導するというのは、あまりに理不尽過ぎませんか?(しかもこの0.8%という数字は、車椅子の人が毎日1回必ずタクシーを利用するという仮定での数値です。もちろん実際の利用頻度は、この数値をはるかに下回ることは容易に予測出来ます)



DPI日本会議なる障害者団体らしきところが、こんなイベントを先日実施しました。私はこの団体宛に抗議を行いましたが、回答必要で問い合わせしたにも関わらず、この団体からはまったく回答がありませんでした。おそらくその程度の「えせ障害者団体」なのでしょうね。

dpi-japan.org

このDPI日本会議の実施したイベント後に、国土交通省からこの行政指導の方針が発表されましたから、これもまず行政指導ありきの茶番劇で、だからこそ一介のタクシードライバーに過ぎない人間のクレームを無視したのでしょう。

 

本当に車椅子の方が必要としているバリアフリーは、どんなことでしょうか?そんなことを考えもせずに、ただ単に「UDタクシーが何台走っている」という数字だけを追い求めているのが、今回の国土交通省の処分ではないですか?

 

meguritaxi.com

 

今回の国土交通省の考え方は、まさに「人がバリアを作る」です。

本来は物理的負担を減らして、運転手も簡単に対応できるような環境を整備することが、本来のバリアフリーのはずです。

この国土交通省の考え方は、「箱だけ作ってあとはそれをやる人間の問題」と逃げてしまう、日本にずっと続いてきた自民党政治の悪癖の象徴のように思います。

 

国土交通省に本当にバリアフリーを実現する意思があるなら、行政処分トヨタに実施すべきでしょう。それがされないなら、ただでさえ足りないタクシー運転手の成り手はますます少なくなり、オリンピックで運転手が足りないという事態に陥ることでしょう。

少なくともこんな処分をされる方向が変わらないなら、私は辞めます。

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