幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

本分。

メーカー販売員に指揮か ヤマダ電機、労働局が調査
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/20070123a4790.html?C=S

これは、いわゆる“偽装請負”の家電量販店版です。
ヘルパー社員という形態は、殆どの家電量販店で常態化しており、この一件もまさに氷山の一角です。家電量販店としてはヘルパーでの店頭要員の確保が無くては、店員のシフトもままならない状態です。これを取り締まる「職業安定法(労働者供給事業の禁止)」って言うのも、微妙で分かりにくいし、処罰対象になる側も、悪いことをしている“実感”が無いのが、違法状態を野放しにしてしまっている一番の原因でしょう。

このニュースでは、業界第一位のヤマダ電機がターゲットですが、規模に関わらず家電量販店の業界は同様のことを行っており、これから順番に「処罰」されていくものと思われます。


※ご参考:メーカーからのヘルパー派遣の実態についての解説です。ヨドバシカメラの例も出ています。
http://www.opn.co.jp/common/pdf/2006_11_specialpreview.pdf


家電量販店側の、ヘルパー採用のメリットはズバリ人件費の削減です。店頭に商品を置くことと引き換えに、メーカー側にリベートを要求したり、ヘルパー販売員をメーカー経費負担で“派遣”させたりと、あの手この手で納入者側に経費の負担を強いてくるのが、家電量販店のやり方です。価格競争が激しくなる中、家電量販店も生き残りを掛けて経費削減に取り組んではいますが、根幹ではこのような旧態然とした商慣行がまだまだ横行しており、このヤマダ電機への調査ぐらいでは何も変わりません。

元々はこのヘルパーも、家電量販店の社員が取引先のメーカーや問屋の社員に、夏冬のボーナス商戦などの応援をお願いしていたものが、どんどんエスカレートしていったものです。社員同士で時間を融通しあい、お店のシフトを埋めていくだけであれば問題はなかったのでしょうが、家電量販店側がそれを人的戦力として計算始めた頃からおかしくなりました。メーカー側もエスカレートする家電量販店の要望に応えざるを得ず、自前で労働力を探して確保して、更には人材派遣会社と契約して人探しや教育を施してまで、要望に応えるようになって行きました。「お宅の商品、もううちの店には置かないよ」って言われれば、それまでですからね。

皆さんが家電量販店で家電品を購入するとしたら、経費のうちの殆どはメーカー負担と思っていただいて間違いはありません。メーカーは家電量販店への仕入れ価格の利益のみで、これらの経費を負担することになります。
家電量販店側の負担するコストは、仕入れ価格に販売員の経費、店舗の経費とロス(万引きや商品の破損など)程度でしょうか。デフレ社会の象徴のごとく、高利益を上げているメーカーから利益を奪取して、消費者に還元しているかのように見せかけている流通業界ですが、こと家電量販店に限って言えばその利益の殆どは、取引先を叩くことによって生んでいると言っても過言ではありません。

はっきり言って、ヘルパーなどで人件費をメーカーに転嫁し始めた時点で、家電量販店という業態そのものの存在意義が無くなった、と私は思います。流通業はオペレーションのノウハウを売りにするべき業界です。消費者の求める商品を数多く揃えて、魅力ある売り場を構築し、それをローコストオペレーションで運営してゆくのが小売業のノウハウのはずです。

家電量販店は、こういったヘルパーのみならず、事あるごとに仕入先にコスト負担を強いてきます。「販売協賛金」という名目で、商品一品の仕入ごとに数%とか、ある一定の期間中に仕入れた金額の何%を値引き、あるいは協賛の名称で“現金還元”したりすることで、メーカー側に店舗の経費負担を求めてきます。
こんな不明瞭な経費を払うメーカーもメーカーですが、要求する家電量販店が一番悪いですね。

“売る立場”という強者の地位にモノを言わせて、弱者へコスト転嫁することしか考えないようでは、業態としての存在意義などあるはずが無いです。コストは自らの手で工夫して削減すべきです。たくさんの魅力ある商品を揃えて、ロス無く低い経費で売り切ってこそ流通業の本分でしょう?ヘルパーに頼ったりリベートを求めて売価を下げたりなんていう、ノウハウのコアの部分を仕入先への転嫁で放棄する状況は、業態として終わったと言っても過言ではないでしょう。こういったことも、昨今の家電量販店業界の淘汰が進んでいることの原因だと思います。単純に価格競争に巻き込まれたからではありません。厳しい言い方ですが、企業としての工夫が足りないからでしょう。

このヘルパーという形態を許すと、一番誰が損をするかと言うと、他ならぬ働く人々です。元々がその企業に社員として貢献出来るだけの労力を、派遣社員業務請負という弱い雇用形態で、低い賃金でごまかされてしまうのですから。

消費者としても、販売価格の中の経費部分がはっきりとせず、本来はもっと安く手に入るべき商品を、無用な経費まで負担させられているかも知れません。家電量販店での人件費負担は無くなりますが、メーカーからの仕入価格に転嫁されていないとは、限りませんから。

こんな現状ですから、家電量販店業界はこれからも、更に再編が進むでしょうね。