幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

頑張らない経営。

http://www.phileweb.com/editor/senka21/2006-01/04.html
ケーズデンキ社長 加藤修一


私は仕事上、家電量販店の方とお話することが多いのですが、この業界は(も?)個性の強い方が多いですね。元々金貸し出身の私でも驚かされるような強烈な個性の方が多くいらっしゃる会社もあり、家電量販店ほど、会社ごとの個性が如実に現れる業界というのも、なかなか無いのではと思います。まあ、何処の業界でも、個性的な方はいらっしゃるでしょうけど。

そのような個性の強い方と、仕事としてお付き合いさせていただくときは、もちろん仕事ですので私の会社の“お客様”としてお会いします。けれども小売業界の常で、一旦仕事を離れれば、その“お客様”から見て今度は私自身がお客様になってしまいます。そこでは私も、その会社を一消費者として評価してしまうことになりますが、仕事でお付き合いしている会社というのは、その会社の裏側も分かってしまっているので、なんとなく“消費者”の顔で行きにくい部分は、正直なところあります。やっぱり、裏から見て嫌な点が目に付いた会社は、絶対に使いたくありませんし。

仕事上で裏から見た顔と、消費者として表から見た顔が同じ会社というところは、殆どありません。これこそ日本全部、色々な業界をひっくり返して見ても、そのように裏表の無い会社というのは珍しいと思うのですが、冒頭リンクでご紹介したケーズデンキはまさにその“裏表が無い会社”だと思います。

リンクのインタビュー記事の主は、ケーズデンキ社長、加藤修一氏です。私のこの方の印象は、「何処へ行っても誰と話しても、いつも同じことばかり繰り返しておっしゃる方だな」というものです。消費者向けの顔、社員向けの顔(これは直接ではなく、社員の方から聞いた話ですが)、取引先向けの顔、全て同じなのです。
これは私の印象だけではなく、ケーズデンキの経営方針を見ても、窺い知る事が出来るのではないでしょうか。

 

ケーズデンキは、経営効率の向上を目指す

通常はM&Aで吸収合併とか経営統合・子会社化などというと、吸収する会社とされる会社があり、吸収される会社は全てを吸収する会社の色へ変更してしまうことになってしまうものです。しかしケーズデンキは、経営統合した相手の全ての資産(社員・社屋・取引先・システムなど全て)を生かすことを最優先に考え、ケーズデンキへの無理矢理な統合は絶対にしません。さすがに昨年は、子会社の事業統合でシステムや仕入れの統合を図りましたが、運営そのものは個別の会社へ委ねる姿勢は変わりません。何が一番効率が良いかを考えるスタンスが、常に徹底されているので、システムなどの統合も、効率が良くなるならやるけれど、地元で売ってる人が一番知ってるからと、至極シンプルな理由で中央集権にすることを無理強いしないのです。さらには、ケーズデンキの本社の社員を、吸収した会社へ送り込むなんてことはコストがかかるからやりません。現地で現地の状況が分かった方に、ケーズデンキの考え方を理解してもらうことのほうが“効率が良い”と考えているのです。

もちろん、そういったM&Aが可能なのは、救済しなければならないほどの会社を、ただ規模を追い求めるだけで無闇に合併させていないからこそ出来ることです。
普通は小売業のM&Aというと、規模を拡大しバイイング・パワーを向上させることで仕入れコストをメーカーに引き下げさせ、物流も扱い量を増やしてコスト効率を向上させることを目的として行われます。しかし、ケーズデンキの場合は規模拡大は二の次で、同じ考え方とサービスをお客様に提供する仲間を全国に拡げて行くことが第一の目的です。この手法では、急激な規模の拡大はもちろん出来ませんが、しっかりとその地域に根を下ろすことでじわじわと継続的に成長出来る力を、蓄えてゆけるように思います。

 

小売業の原点は「お客様に代わって商品を探す」こと

ケーズデンキの考え方の基本に、小売業の原点は、お客様に代わって商品を探すことだというものがあります。
お客様が家電製品を買う方法は、現在の日本ではインターネット通販や大型スーパー、カメラ系の量販店など本当に沢山のルートがあります。
極論すると、家電製品の知識が豊富で、沢山のメーカーの色々な商品から必要な機能をチョイスして、耐久性を考慮し購入価格がリーズナブルかどうかを判定する能力を、もし全ての人が持ち合わせているのであれば、家電量販店などという業界は必要ないかも知れません。しかし大多数の消費者は、そのような知識を持ち合わせる訳など無く、単に価格とサービスで比較検討するに過ぎません。
だからこそお客様に代わってご希望の商品をご提供する“小売業”という仕事の存在価値がある訳で、その仕事をサービスとしてより向上させる為に、大型店舗化してお客様が選ぶことの出来る商品を増やし、接客サービスの向上を図って、店舗としての競争力を向上させることにケーズデンキは拘っているように見えます。
それを土台にしてさらに“頑張らない経営”で、担当者が担当業務に集中出来るオペレーションの仕組みを作ることで店舗の効率を上げて、利益が出る体質を作っているのです。

ケーズデンキは、ニュース的には“売上高○兆円突破”とか、“日本全国○千店舗達成”とか、“ポイント還元○%”等の刺激的なフレーズは一切ありません。人間で例えるなら、一切虚勢を張らないで、自分の身の丈にあったところで、一所懸命に仕事に取り組んでる、そういうイメージがあります。
あくまで私の個人的な印象ですが、久々に共感できる経営者の方にめぐり合えました(一方的にですが)。

幕張の近くに店舗が無いのが残念ですね。