幕張の風

So-netブログ「From Makuhari~幕張の風」から移転しました。 仕事のこと、ニュースのこと、音楽のこと、野球はMarinesと高校野球中心に書きとどめたいことを書いて行こうと思います。

てんびんの詩。

このタイトルのビデオ映画、ご覧になった方がいらっしゃるとしたら、きっと営業・販売のご経験者でしょう。

私も消費者金融時代、このビデオ映画のお世話になりました。とは言っても見て勉強する側ではなく、これを教材に使って新人研修を実施する側として、このビデオ映画を選んでおりました。

映画の内容は、こちらをご覧ください。

「てんびんの詩」
 

tenbinnouta.ciao.jp

 

消費者金融という仕事は、商売とはいえ会社は所謂“強者”と言われる、お金を貸す側になります。これがビジネスでなく単なるお金の貸し借りであれば、もちろん貸す側が立場が強いのですが、商売という観点に立てばもちろん、お客様である借りる方の立場が上になることが当たり前です。それでも新人で業界に入りたてだとその感覚をどうしても理解出来ず、借りる側のお客様を見下してしまう人が少なからず存在しました。

そんな新入社員は、

「なんでこんな金利でお金借りるの?」 「他人様からお金借りるなんて、どういう金銭感覚してるの?」

などという疑念が沸々と湧いてきて、どうしても自分より劣ってしまう人間と見てしまい、“お客様”という感覚が持てないのでしょう。

この「てんびんの詩」は、そういう新入社員の気持ちを改める機会を与えてくれる、貴重な作品だと思います。

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小学校卒業と同時に鍋蓋を売る、という修行に出る主人公ですが、最初は鍋蓋を売る事ぐらい容易いことだと甘く見てしまいます。ところが鍋蓋などという、「どこにでもあって誰でも長く使うもの」であれば、どの家も間に合っており、新たに買う必要などないのです。
そこで主人公の少年は、揉み手をして人にへつらってみたり、策を講じて騙して売りつけようとしたりと、幼いなりに知恵を講じて何とか売ろうとしますが、下手な嘘は最後にはボロが出て、主人公は手痛いしっぺ返しを受けます。

そういった経験を通して主人公の心の中に芽生えたものは、商品である鍋蓋への愛着でした。ある日、河原で洗う前に放置されていた鍋蓋を見て、その鍋蓋は、誰かが自分と同じように苦労して売られたものだろうと思うと、ただその鍋蓋がいとおしくなり、持ち主に無断で洗ってしまいます。

それを、その鍋蓋の主に見つかります。最初は泥棒と勘違いされますが、主人公がただ鍋蓋を洗っていただけであることに主が気づくのにそう時間はかかりませんでした。主人公の素直な話を聞くにつけ、この鍋蓋の主であるおばさんは、鍋蓋を本当に気遣う気持ちの芽生えた主人公に心打たれます。しかもこの主人公はこのおばさんの息子と同い年であることも知ります。そして・・・。

消費者金融も、"お金”という商品は鍋蓋と同様に、どこにでも同じものがあり普通は無くて困ったりする方はいらっしゃいません。お金という特性上、貸してくれるところがあれば、どこで借りたって同じです。そういう状況の中でお客様に、当社を次にまたご利用して頂く為に一番大切なことは、お客様に信頼される会社になり、信頼される担当者になることなのです。
その為にはお客様とキチンと心を通わせなければなりません。高飛車な姿勢ではお客様は心に距離を持たれますし、嘘偽りの気持ちでは見透かされてしまいます。ただご来店された方にご融資すれば良いというものではないのです。

ご来店される方はご家庭にいろいろな事情をお持ちです、でなければ今時見ず知らずの他人に頭を下げてお金を借りに来たりはしないでしょう。そういうお客様の気持ちを理解せずに、高飛車にご融資していたのでは、完済なさったらそれで終わりですし、お客様の本当のお役に立てたとは、言えないでしょう。

消費者金融においても、お客様のお役に立てるという気持ちを持つ限り、他社の借り入れも全部完済した後に、また不幸にしてお金を借りる必要が生じたら、真っ先に当社を思い出して頂けるでしょう。お客様が不幸にしてご返済が滞りがちになったときも、信頼をいただいていれば真っ先にご相談に来られるものです。

主人公が鍋蓋を買ってもらえたのも、鍋蓋を使う側の気持ちが本当に分かったからでしょう。私たち消費者金融に従事するものも、自らの仕事に誇りを持って、お客様の事情をきちんと汲み取りお客様の立場でご融資する、ご相談を伺う気持ちを持ちなさい、そういう担当者になることに、喜びを見いだして欲しいと、初めて業界の扉を叩いた人たちに諭すのには、この「てんびんの詩」はとてもよいお話でした。

おまけみたいなものですが、主人公を見守る父・母の気持ちも、何とも言えず良いものがあります。現代の日本人が失ってしまった奥ゆかしさ、本当の思いやりと愛情を思い出させてくれます。

もし、ご覧になった事がない、という方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧になる事をお勧めします。